読了 - 意思決定のための「分析の技術」
目にしない日が無くなった「DX」。
欠かせない視点としてブラッシュアップしておきたいと思ったのが、分析スキル。
DXは現場レベルの改善を目指すものではなく、経営や顧客の視点が欠かせない。
そうした認識からも本書を手に取ってみた。 (本書のサブタイトルは「最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法」)
本書はマッキンゼーを経て、東京マネジメントコンサルタンツを設立した現役の経営コンサルタントである著者が「分析の技術」を整理・体系化しようとしたもの。
当然ながらMECEを意識したコンテンツの構成は、分析のガイドラインとして使えるものになってる、と感じた。
その章立てを見ると
第1章「大きさ」を考える 第2章「分けて考える」 第3章「比較して」考える 第4章「変化/時系列」を考える 第5章「バラツキ」を考える 第6章「過程/プロセス」を考える 第7章「ツリー」で考える 第8章「不確定/あやふやなもの」を考える 第9章「人の行動/ソフトの要素」を考える 終章 コンサルタント能力の全体像と分析の位置づけ
目次を見返すだけでも、分析の視点が漏れていないかを自己点検できる。
もちろん見返すときは、章のレベルではなく節も省かずに見返してみると良い。
「この本、使える」と感じさせたところの一例を挙げてみる。
MECEといえば、論理的思考の教科書では定番となっているが、本書では「実際に使いこなす」ことを意識して掘り下げている。
曰く、MECEでの分け方を「足し算」「引き算」「掛け算」「切り口の軸を明確にする」「多元の要素を考える」などとし、それぞれについて解説している。
MECEに考える際、非常にうまい視点の一つは、合計の数字を掛け算の関係で表すことができないか、を考えること
これなどは売上で考えれば、その意味するところが分かる。
売上 = 客数 × 客単価
さらに
客数 = 既存顧客 + 新規顧客 ー 流出顧客
客単価 = 購買頻度 × 購買点数 × 一点あたりの単価
と、分解してみると、打ち手に繋がるMECEになる。
(一部、加減算が混ざったところは、本質は外してないハズなのでご容赦ください)
また、「多元の要素を考える」というのも、その順序を追うとMECEを実務にインパクトある形にレベルアップするのに良い。
多元の要素を考える順序としては、
(1) 一分野に絞り込み、そのなかで二元の要素を考える
(2) 二元分析の上に三元目の指標を乗せる
(3) 割り算をする
(4) 多数の要素をより大きな二軸に集約して考える
(5) 多元回帰などの数学的処理法を用いる
(3)(4)によって多元に広げた分析を二次元に収めることで、その言わんとするところを伝えやすくなる。
こうした工夫は実践の場で知ってると知らないでは大きく異なる。
本書は分析という分野では、実践に活かせる掘り下げがあって身につけるまで読むのが良さそうな本でした。
さて、本書著者は「後 正武(うしろ・まさたけ)」か、この人の書いた本を探してみよう。