バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - マッキンゼーが解き明かす生き残るためのDX

DXに関する書籍は数多く、何冊か読んだ。

本書ほど日本企業におけるDX取り組みの課題、その構造を解き明かし、本当の意味での推進に舵を切るための指針をガッツリと書いた本には出合えてなかった。

本書では、DXを成功させるための要諦を、Why、What、How、そして、あなた自身が何をすべきなのか、という構成でまとめました。

日本の製造業が遅れている3つの原因(1章)、思ったようにDXを進めることができない企業に共通して見られる、典型的な3つの "症状"(2章)、DX成功企業に共通する目標(2章)、それぞれ納得感があり、考えさせられる。

特に考えさせられたのは「日本企業に共通するデジタル変革における特有の課題」(3章)。

曰く

  • 日本企業では経営層による意思疎通・意思決定がなされずに、曖昧なままデジタルにまつわる取り組みが進んでしまう傾向があり、それが放置されている

  • 任期5年で変革できるか

具体的なレベルで目標となるビジョンが共有されている必要があるけれども、実際にはそこまでたどり着いていない。

「抽象的なお題目」が掲げられているだけ、という企業もあるのかもしれない。

それでは、具体的にどうなればいいかが全従業員には伝わらない。

「多くの場合はできないのではなく、やりたくない」これも本書指摘。

やりたくないと思っている相手に抽象的なことしか示さなければ進まないのは当然だろう。

また「任期5年で変革できるか」も大きな問題。

DXがビジネスモデルの変革である以上、余程の覚悟がなければ5年でできるわけがない。

「日本ではCEOの就任年齢が57.5歳で、5.1年の在任期間」とも示されている。

これが急に若返ったり、任期が延びたりするとは考えにくい。

世代を超えてフィロソフィーを伝承することができるかどうかがカギだとは思うが。

本書は山積みの課題を挙げているだけではない。

マッキンゼーがその事業の中で見出した、DX成功企業に共通する目標、成功のレシピも解説し、本書を読む読者自身がどう行動すべきかも示す。

本当に不足しているのは、事業もデジタルもわかり、その両者を通訳してつなげることができるトランスレータ

課題は大きく難しい。

それでもDXは、全従業員が自分ごとと認識して、自分が変わらなければならないと説く。

この本、何度も読み返すことになりそう