読了 - 案件獲得
目を引かれたのは「ゼロからはじめての仕事が舞い込む」の表紙コピー。
本書はWeb系フリーランスの営業である著者がフリーランスのエンジニアやデザイナー、ライターに感じる「こうすれば仕事が取れるのになぁ」を書籍化したもの。
受注を重ねた実績からのアドバイスなので実感を伴う内容となっている。
体系化しているわけではないので、ざっと全部読んで、気になった個所を掘り下げると良いかも。
本書が教えるポイントをピックアップ
- 会社とフリーランスの継続的な関係に水を差すのは、ほとんどはコミュニケーションか、納期か、費用
- 営業経験のない人ほど笑顔が極端に少ない
- 多くのクライアントの悩みが、集客、売上、求人に集約
- 自分のスキルが売れないのは、なぜ?…それは「説明がないから」
- 「すごい人」になるより「気軽に電話で切る人」になれ
最初はどこから取り掛かるのか、提案の締めともいえるポイントも、その考え方を本書で語っているので、上に挙げたポイントが気になる方は読んでみては、どうでしょう。
ちなみに本書はAmazon Kindle Unlimitedでも読める。キャンペーンで「3か月で99円」なことも。
『ドリルを売るなら穴を売れ』
本書のはじめにで、佐藤義典著の「ドリルを売るなら穴を売れ」が営業の本質として紹介されている。
せっかくなら「売れたま」の切り口があったら面白かったと思う。
ということで、売れたまっぽく考えてみる。
本書がターゲットにしているフリーランスのバトルフィールドは中小企業向けのWebサイト構築支援者。
支援者といってるのは、作ろうと思えば顧客である中小企業でも作れるし、Webサイトは顧客にとってのドリルに過ぎないから。
差別化は商品軸、お手軽軸、密着軸の3つで考える。
まずは商品軸。
Webサイト構築における商品軸は、優れたデザイン、高機能あるいは誰にでも使いやすいサイト、これらを提供する技術力。
実際、商品軸での差別化は難しい。
デザインにピカソ的な独創性が必要なわけはないし、「金に糸目は付けない」なんて奇特な注文があるはずもない。
次に手軽軸。
お手軽軸は、豊富なテンプレ提供などによりサイトのサービスインまでが短工期であること、あるいは低価格やフリーランスへの発注のしやすさ。
でも少しネットで調べただけで、低価格、スピード納品をウリにしてる事業者・フリーランスはいくらでも見つかる。
結局のところは密着軸。
「すごい人」になるより「気軽に電話で切る人」になれ、と著者は言ってる。
ただ密着軸のポイントは顧客との心理的な距離感。
普及するリモートスタイルは、物理的な距離をあけることと、以前なら競合にならなかった地域のフリーランスが距離を詰めることにもなっている。
つまり、密着軸をメインに据えて、提案力とスピード対応を添えるのがWeb系フリーランスの基本戦略になる(、多分)。
読了 - 成功するクラウドファンディング
固定資産を担保に出来ない、つまり銀行から資金調達できないケースでも、面白い、あるいは意義のある事業はきっとある。そんな時、クラウドファンディングは発案した個人や企業を後押しする有効な手段として浸透し始めている。
いま、あるいは今後、起業や事業展開を考えているなら知っておきたい資金調達のノウハウが本書には詰まってる。
実際、ニュースで自治体やスタートアップ企業がクラウドファンディングで資金を調達したという話を増えてきた。
それでも、赤い羽根や保護猫支援のような募金はともかく、任意の企業や個人に対して寄付を行う文化は、まだあまり浸透していないように思う。
本書は支援者に金銭以外の物品やサービス・お礼のメッセージなどをリターンするタイプのクラウドファンディングを対象に、その具体的な進め方、ノウハウを説いた実用書。
特に、クラウドファンディングに伴って発生する費用やリワード(支援者に返すお礼のこと)についてが金額まで記載されているので、トライしてみようという方にはお勧めの書籍。
その一部を抜粋してみると
- 目標額が50万円以上なら動画は必須
- 写真をたくさん集めて動画にするだけなら5~7万円で外注できる。
- 動画につけるナレーションは10分程度なら1万円で外注可能
- クラウドファンディング事業者への手数料は支援額の20%程度。
また、
成功法則① たとえ500円の支援でも必ずリターンを用意する
これも「ノウハウだ」と感心する。
いわく、低額の支援に対してリワード設定があると検討してくれる人が増える。
確かに気づいてくれる人が増えないと話にならない。
本書のノウハウは、そこからさらに踏み込んでいく。
支援者に「500円(の支援)じゃリターンがつまらない」と感じさせるところがポイントです。
5000円、3万円と支援額を増やすとイイものがもらえる、そう感じさせるようにリワードを設定すると一人当たりの支援額が大きくなる。
低額の支援者をたくさん集めるのではなく、「個人が払える最大限の金額を集める」ことが、クラウドファンディングの成功に結び付く。
言われてみれば「なるほど」と思うけど、初心者ではその重要性には気づけないかもしれないノウハウが本書には詰まっている。
- 作者:小田 恭央
- 発売日: 2018/12/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
読了 - 本当に使えるDXプロジェクトの教科書
企業内の業務プロセス改善や情報共有を目的とした、システム導入というのは基幹システムと違うものの、以前からある一つの分野で、現在はSoE(System of Engagement)などと呼ばれている。
SoEは以前「情報系システム」と呼ばれていた。
情報システムに対して「情報系」というと違和感を持たれそうだが、どちらかというと基幹系システムの対語。
企業の基幹業務(生産管理、販売管理、購買、在庫管理、人事など)を対象とせず、データ分析、情報の共有・活用やコミュニケーションの活性化などを対象としている。
本書はDXプロジェクトの教科書とあるが、その中身はSoEだという印象を受けた。
基幹業務を対象としたITプロジェクトは、企業における「今の仕事のやり方」がベースになる。
何のシステムも使っていないという企業は少なくなっているので、基幹系システムのプロジェクトは「どこを、どのように変えたいのか」を聞くことが要件定義になる。
一方SoEでは「ちゃんと仕事は出来ているから『何を変えたい』と聞かれても困る」というのが現場の感覚。
本書でいう
DXプロジェクトでは要求・要件が決まっていない
に通じる。
結果として、SoEのITプロジェクトは概ね本書のような流れになる。
つまり、企画・構想から始めて、PoC(Proof of Concept)で良い結果が得られそうかを検証。
OKなら本格的に導入するための流れ(要件定義、設計、実装、テスト、移行、導入後フォロー)へと進む。
そもそも「SoEとDXは違うのか?」というと違うと思っている。
DXはシステム化という小さな話ではなく、デジタル活用を土台として、業務プロセスの変革や商品・サービスの開発、顧客創出などを進める組織に移行すること。
ビジネスモデルの変革や、組織全体がデジタル・ネイティブへと移行すること、を含むため、経営レベルのプロジェクトになる。
SoEはDXで取り組むテーマの一つに過ぎない。
「DX推進のための教科書」として読むと、多くの方が求めるものとは違うことになる。
基幹系システムの開発にしか携わったことのないITエンジニアが「こういう進め方もある」と知る意味では良い。
読了 - 新 コーチングが人を活かす
行動自粛が続いて、ストレスのたまる日常に疲れている人だらけな毎日。
ビジネスの現場では慣れないテレワークにも疲れている人は多くいる。
従来とは違う執務環境の中で、メンバーのモチベーションを維持する方法の一つとしてもコーチングは有効。
また、コーチングは、心理的安全性を実現あるいは維持していくために、リーダーが身に着けておきたいテクニックでもある。
本書は著者が2000年に出版した書籍をアップデートしたもの。
このタイミングで改訂版を執筆した理由、3つが本書の前書きにある。
ここで気づいたのが、コーチングに対する誤解が改定の動機となるほど多いということ。
著者が取り上げている誤解とは
つまり、コーチングを実践する人は、職場の上下関係をそのまま持ち込んでしまう人が多い、ということか。
本書は改訂版執筆の動機に「誤解を解きたい」とあるように、コーチング初心者がやってしまいがちな失敗や、どういうスタンスで臨むか、といった点も分かり易く解説されていて初心者と、自分のコーチングスキルをふり返りたい人には良いように思う。
また、末尾にある「こんな場合はこのスキル - 本書活用ガイド -」は本書で解説しているコーチングスキルをシチュエーション別にまとめたものになってるため、コーチとして接する前に読み返すのに良い。
そのシチュエーションは
- 相手があまり話してくれない
- 相手に話させたいのに、つい自分が一方的に話してしまう
- 相手がスランプに落ち込んでいる
- どうしてもそりの合わない相手がいる
- 一生懸命自分の経験を伝えても、真剣に受け止めてもらえない
などなど。
自分だけ用に、これらのページをスマホに取り込んでおいて、フラッシュカードのように流し読むのもアリ。
- 作者:鈴木 義幸
- 発売日: 2020/06/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
読了 - テクノロジーをもたない会社の攻めのDX
本書が意味するところは「ITを得意としない会社」のこと。
そもそもDXは、ITが得意であるかどうかで必要性が変わるわけではない。
今がVUCAな時代であるから、速い変化に適応できることが生存戦略の基本となっている。
ムダを省いて機動性を高め、変化の予兆を察知する手段の一つがデジタル化。
デジタル化をうまく進められると、そこから得られるデータを土台に、新たな施策推進や事業開発へと展開可能になる。
本書の使い方としては、非IT企業がDXに取り組むための「ザックリした見通し」を得るのに良い。
ホントにDXに取り組む際には、DX推進を支援できるコンサルの伴走が欲しいところ。
ただコンサルも玉石混交なので、自社にマッチするコンサルを選ぶ前提知識として読んでおくのもアリかも。
手を付け始めるなら深化
企業が事業の継続、拡張を目指す方向を本書に沿って言うなら、既存の事業や業務を高度化・変革していく「深化」と、新規の顧客価値やビジネスを創出していく「探索」に分かれる。
最初はどちらから手を付けるかと言えば、本書にも第1段階の最初のステップとして
特定の領域での小さな取り組み
とあるように、既存事業を対象にした取り組みが望ましい。
まずは、
- デジタル化による感覚を養う
- 俊敏にトライする習慣を身に着ける
- デジタル化が良い結果をもたらすという実感を持つ
そこから始めるのが良い。
そのステップを本書では
「深化」のためのDX施策
- 監視・可視化
- 制御・自動化
- 最適化・自律化
としている。
これならITを得意としない会社にも取り組みやすそう。
本書ではDX施策を考えるための着眼点なども列挙されているため、一読してみては如何。
テクノロジーをもたない会社の攻めのDX ーー非IT・非デジタル企業が秘める破壊的成長
- 作者:内山 悟志
- 発売日: 2020/10/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
読了 - Pitch 世界を変える提案メソッド
正しい準備ができれば、自分の言葉で人を動かすことができる
以前から気になっていた本書。実は「How to プレゼン」の本だと思って先送りにしてた。
読み始めて、すぐに誤解だったことに気づく。
本書は、主にスタートアップを目論む人が、投資家から資金を引き出すことをターゲットに、そのノウハウをまとめたもの。
でも、新しい取り組みをはじめたい人が、周囲を説得することにも使える。
本書で解説する価値を見極めるフレームワーク、「実現したいこと」「意義」「実現性」を語るフレームワーク、アイデアを検証する方法、これらはスタートアップでなくても、自分でやりたいことがあるなら、利用機会は必ずある。
アイデアを検証する方法のポイントは、
「ユーザー/課題」フィット検証
- 課題を抱える人たちは本当に存在するのか
「課題/解決策」フィット検証
- 課題を抱える人たちを満足させられるか
「解決策/プロダクト」フィット検証
- 期待する効果を、プロダクトが実現できるか
「プロダクト/市場」フィット検証
- プロダクトはユーザーに受け入れられるか、事業として成長できるか
この4つ。
「プロダクト/市場」フィット検証以外は、日常的な場面でのアイデアにも使える。
これらのフレームワークや方法は、何回も繰り返して、思考パターンに刻み込むのがベスト。
ただ、そこまでできなくても「アイデアを磨き上げるときに使えるメソッドが書いてあったハズ」と思い出せれば使うことはできる。そういう意味でも一読の価値アリと言える。
なお、特に共感したのは、実現したいことを語る時に使う「トラクション」。
トラクションとは、既にスタートしている事業や取り組みが成長していく兆しのこと。
「すでに効果が出始めてる」この事実が持つ説得力は大きい。
ディフェンシブな組織の中で、上長から「やってみろ」と言わせるには必須。
「まずは小さく成功する」自分に自信を付けるためにも有効。
スタートアップを目論む人はもちろん、そうでなくても「せっかくの思い付き」を実現してみたいと企む人にはお勧めな書籍。
余談
ちなみに「pitch」で画像検索すると、サッカーグラウンドがいっぱいヒットする。
ビジネス英会話だと「短時間(2分以内)一発勝負のプレゼン」。
どういう由来で「pitch」という言葉になったんだろう…
(予約特典あり)Pitch ピッチ 世界を変える提案のメソッド
- 作者:Open Network Lab
- 発売日: 2020/07/27
- メディア: Kindle版
読了 - 両利きの組織をつくる
組織が進化するには
- 守りの経営(既存事業を深掘り)
- 攻めの経営(新規事業を探索する)
この両方を実現する異なる二つの能力が必要。これを「両利きの組織」と言っている。
それ自体はごもっともな話。
それで、どうやって両利きにするのかが本書のテーマ。
経営幹部とミドルの研修テーマに良さそう
本書は事例、理論、実践で構成されておりケーススタディとしてみると良くできている。
題材に取り上げられている素材メーカーのAGCについても、かなり細かい部分まで踏み込んでいるので具体的で臨場感がある。
経営幹部には「両利きにするために、あるいは両利きであり続けるために」を考える研修として、
ミドルには「自分たちがトップになっていく過程で必要な思考パターンを習得する」研修に使える。
自分たちで未来像を描く研修にもなる。
既存事業を深堀りする組織と新規事業を探索する組織を両立する際の問題は、昨今のDX人材採用の課題にも通じる。
既存の人事制度から外れるほどの高額報酬を提示しなければならない高度な専門性をもつ人材。
仮に雇えたとしても、従前の報酬体系にある従業員と同じ部署に配置するのはムリ。
ん?
そうなると「両利き組織への移行が喫緊の課題だ」という企業が多いということか。
経営幹部の方と、人事担当はこの本を読んでみて、この後の組織変革プロセスを考えてみると良いかも。
両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」
- 作者:加藤雅則,チャールズ・A・オライリー,ウリケ・シェーデ
- 発売日: 2020/03/05
- メディア: Kindle版