読了 - 本当に使えるDXプロジェクトの教科書
企業内の業務プロセス改善や情報共有を目的とした、システム導入というのは基幹システムと違うものの、以前からある一つの分野で、現在はSoE(System of Engagement)などと呼ばれている。
SoEは以前「情報系システム」と呼ばれていた。
情報システムに対して「情報系」というと違和感を持たれそうだが、どちらかというと基幹系システムの対語。
企業の基幹業務(生産管理、販売管理、購買、在庫管理、人事など)を対象とせず、データ分析、情報の共有・活用やコミュニケーションの活性化などを対象としている。
本書はDXプロジェクトの教科書とあるが、その中身はSoEだという印象を受けた。
基幹業務を対象としたITプロジェクトは、企業における「今の仕事のやり方」がベースになる。
何のシステムも使っていないという企業は少なくなっているので、基幹系システムのプロジェクトは「どこを、どのように変えたいのか」を聞くことが要件定義になる。
一方SoEでは「ちゃんと仕事は出来ているから『何を変えたい』と聞かれても困る」というのが現場の感覚。
本書でいう
DXプロジェクトでは要求・要件が決まっていない
に通じる。
結果として、SoEのITプロジェクトは概ね本書のような流れになる。
つまり、企画・構想から始めて、PoC(Proof of Concept)で良い結果が得られそうかを検証。
OKなら本格的に導入するための流れ(要件定義、設計、実装、テスト、移行、導入後フォロー)へと進む。
そもそも「SoEとDXは違うのか?」というと違うと思っている。
DXはシステム化という小さな話ではなく、デジタル活用を土台として、業務プロセスの変革や商品・サービスの開発、顧客創出などを進める組織に移行すること。
ビジネスモデルの変革や、組織全体がデジタル・ネイティブへと移行すること、を含むため、経営レベルのプロジェクトになる。
SoEはDXで取り組むテーマの一つに過ぎない。
「DX推進のための教科書」として読むと、多くの方が求めるものとは違うことになる。
基幹系システムの開発にしか携わったことのないITエンジニアが「こういう進め方もある」と知る意味では良い。