読了 - 多様性の科学
人類繁栄の要因は「集合知」であり、多様性がその基礎にあると言うこともできるらしい。
しかし、集団には多様性を失わせる習性がある。
本書はこの多様性を損なってしまう仕組みを解説した書籍。
この部分をざっくりと要約させてもらうと、
多様性を失わせる集団の習性、それは「類は友を呼ぶ」のと、ヒエラルキーの形成。
「類は友を呼ぶ」は、ものの見方、考え方が似通っている人が集まることなので集団が均質化することに繋がり、ヒエラルキーは上位者の意にそぐわない意見、情報を共有しなくなることによって多様性を失っていく。
さらに集団から多様性が失われると、これらの習性がその状態を強化してしまう。
こうして同じ性質、情報を共有する集団へと突き進む。
偏った思想、偏った情報、偏った信念。
これがハマる時は良い。物事が単純な時にはハマりやすい。
もっとも、その成功体験が偏重をさらに強めることにもなる。
多様性に価値があると思っていても、放っておくと集団からは多様性が失われる。
と、まあこんな感じですかね。
結局のところ多様性を豊かにするには積極的にそれを育む取り組みが必要なんでしょう。
(ちなみに本書でいう多様性は人種、性別、年齢の違いではなくて認知的多様性)
本書で挙げられている取り組みは
- 「無意識のバイアス」を取り除く
- 影の理事会
- 与える姿勢
「影の理事会」というのは、ヒエラルキーの影響を受けない形で上層部に意見を言える場をつくること。
実際、ダメなプロジェクトのメンバーはたいてい問題を指摘できるんですが、だからと言って、それをプロマネに話して改善を図ることはしないんですよね。
社内に、匿名で好き勝手なことが投稿できるサイトがあると面白い意見が見つかるのかもしれません。
仮にその言いたい放題サイトが荒れるとしたら、それは「従業員の心がすさんできている」という重大な警報でもあるわけですしね。
本書ではCIAの失敗や、ヒエラルキーによる意見の抑制が墜落という事態に至ったユナイテッド航空の話など、多様性が影響を与えたエピソードが豊富に盛り込まれています。
エピソードの部分が多くて見失いそうにはなりますが、各章で語られる意見の背景を理解するのには良いかと思います。