読了 - デザインアート思考
先日「あなたがよく使う方法論は?」と問われて答えられませんでした。
何故、答えられなかったのかを考えて気づいたのは、
「何でも解決できる万能な方法論は無い」と思っているし、
状況に応じて知識を総動員しているから、そこに名前が付かないということ。
最近、ソフトウェア開発の世界では、アジャイルプロセスのスクラムが有名になりましたが、スクラムだけでやってるわけではないですよね。
そこにはXPやリーンのプラクティスも混ざるし、ドメイン駆動、テスト駆動、ライフハックで得た知識なんかも使います。
そもそも賢い人が17人も集まって議論しても、最適なプロセスが見いだせなかったからアジャイルソフトウェア開発宣言になった訳ですしね。
『ナントカ思考』というのも、本当にたくさんありますよね。
きっと、一つの思考法を実践してもうまくいかない人がいて、
その人なりの工夫を加えたり、アプローチを変えたりして一つの方法が確立される。
そして新たな「ナントカ思考」が生まれる、そんなことを繰り返してるんでしょう。
広くいろんな知識を得て、状況に応じて試行錯誤するのが最適、と私は考えます。
今回は「デザインアート思考」
珍しく国産、御茶ノ水美術専門学校で生まれたそうです。
この図は書籍「デザインアート思考 (OCHABI Institute著 出版:翔泳社)」からお借りしました。
左のマーケティング・サークルは顧客とそのニーズを探りだすため、
右のプランニング・サークルはクリエイターのウォンツ(実現したい世界)をもとに実現方法、有効性を検証するための思考プロセスを表し、
二つの円の中から外、外から中と行きつ戻りつしながらニーズとウォンツを結びつけ、ビジネスプランへと発展させる思考法です。
詳しくは本書の「Part2 デザインアート思考で課題を解決しよう」に紹介されていますが、その特徴を感じた個所をいくつかピックアップします。
- 分析は、スケッチした時点から始まっていますが、机や壁、ホワイトボードに貼る過程でも、どの位置に貼るかで、さらに分析を進めることができます。
- カスタマー像を視覚化しながら、カスタマーのライフスタイルを想像し、消費行動をシミュレーションしていく…
- 心に思い描いたカスタマー候補の年齢、ジェンダー、職業といった大まかな情報と、これらの情報から想像されるカスタマーの容姿を上半身だけ1つ目の色の付箋にスケッチしていきます。
- それぞれのニーズからカスタマー群別にそのライフスタイルを絵に描くなどして想像しましょう。
- 見えにくい「マーケット」ではなく、想像しやすい「マーケットを形成するカスタマー」について、その容姿や所属するコミュニティの特徴、あるいは衣食住などの消費傾向をキーワードとして画像を検索します。
- 画像検索の過程で、カスタマーのマインド・シェアの高い商品やサービスを見つけたら、これに関連する競合と、今度はその競合のイメージを画像検索しましょう。
- メンバー全員でイメージに合う画像を集め、意見交換しながら1枚のスライドにまとめていきましょう。
そう、デザインアート思考はプロセスの随所でイメージを使います。
文章表現ではなく視覚表現を多用するところが最大の特徴です。
視覚表現は、それを描いた人が表現しようとしたコトと、見た人が受けとる印象が容易に一致しません。
それはメンバーそれぞれが内面に持っている知識や体験が異なるために起こります。
結果として文章表現では引き出せない暗黙知をぶつけ合うことになり、新規性のある発想を活かせる、ということなんでしょう。
この思考法の成立要件は観察ですね。
日常の人、仕事、人の集まる場所、イベント、さまざまなモノ、コトを観察することで、イメージするときの切り口や精彩が変わるはず。
この思考法、面白いけど使えるようになるまでの準備が大変そう。