バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - なぜネギ1本が1万円で売れるのか?

「あり得る」

それが第一印象でした。

千疋屋のオンラインショップなら2万円を超えるメロンもありますし、初競りで1匹百万円を超える値が付くズワイガニもあります。

超高品質で、ターゲットを的確に捉え、ブランディングに成功していれば「食べてしまえば無くなるものなのに、何故そんな値段が?」と言いたくなるモノでも売れてますよね。

だから最初は、ブランディングマーケティングの本かなぁ、と思いました。

めちゃくちゃ美味しくても、規格外であることが理由で農協やスーパーで扱ってもらえない食品があることは、わりと知られています。

しかし、ネギを贈答品にしてしまった発想は面白い。

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いろんなモノが溢れる時代になったから、高級食材じゃないはずの「ネギが贈答品」という面白さが受け入れられたように思います。

ただ、著者がスゴかったのはその真の狙いの方。

真の狙いは、1万円のネギを作れる農家なら、その下のランクのネギも美味いに違いない、というイメージをつくり、残りのネギの単価アップすること。

そしてちゃんと成功して、ネギ農業を儲かるビジネスにしていることがスゴい。

著者が経営する「ねぎびとカンパニー」は、商品企画とマーケティングで成功してるだけでもありません。

あくまでそれは、成功に至る施策の一つ。

「測れないものは改善できない」と言いますが、数値で捉えること自体は、簡単ではないけど、よく観察し、よく考えることで可能だということが本書から伝わります。

本書では著者が、どんな問題意識を持ちながら日々を観察し、注目すべき指標を見つけていったかがわかります。

  • (畑の大きさが)4反歩以上だと反収(面積当たりの収穫量)は減っていました。…その一方で、1反歩未満の畑でも反収は減っていた。
  • 畑の手前2メートルと、奥から2メートルは、なぜかネギが枯れたり、短くしか育たなかったりする。
  • 2018年8月は人件費率が16.5%、9月は15.6%…

慣習に捉われず、観察し、数値化して問題をあぶり出す、本書(特に5章)で紹介されている取り組み方は農業以外の多くのことに応用できます。

抽象的なことだけでなく、失敗した事例も隠さず書いてくれてるから具体的で参考になります。

読みやすい本ですし、農業関係者以外の方でも試しに読まれてみては如何でしょうか。