バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 玉造温泉の奇跡

Amazonのリコメンドが「自己啓発の本をお探しですか?」ばかりになってきたようなので、違うジャンルの本をと探してみると面白そうなタイトルを見つけました。

本書は玉造温泉が再生していく過程を「中の人」として奮闘した角幸治(すみ ゆきはる)さんが「視察に行きたいけど(コロナ禍の)今は行けない」という声に応えて書いたバーチャル視察案内でした。

再生に向けた一つひとつの出来事が読みやすくて臨場感のある文章で辿れて読み物としても楽しいです。

f:id:ino-agile:20211205212607j:plain
(温泉画像というとサルなのかなぁ…)

「あるもの磨き」

本書ではあまりたくさん失敗が出てきませんがきっとそんなことはないのでしょう。

でも次々と「元から街にあったもの」を活かした施策を生み出していく過程は楽しいです。

  • 温泉の効能を活かすための旅館での過ごし方や温泉の入浴方法をレクチャーする旅館スタッフを養成して「温泉ビューティーアドバイザー」。
  • 川の鯉をみて喜ぶ観光客から、鯉の餌を「恋叶いの素」と名付けて川のすくそばで無人販売
  • 地元の人にしか知られていなかった玉造湯神社の願いが叶う石と、やはり前からあったメノウのお守りをそれぞれ「願い石」「叶い石」と呼び名を付け、これらをくっつけて願い石の力を分けてもらう儀式を「御霊の分霊」と名付けた。

どれも覚えやすくて、観光客としてはやってみたくなる「コト」や、誰かに話したくなる「コト」になっています。

コト消費に適応する、というのはこういうことなんだと実感する例だらけです。

「予算がない」は、やらない理由にならない

施策を思いついても「予算がない…」という話になりがちですが、玉造温泉では『周藤さん』というアイデア豊かで人望が厚い人が

「観光なんてものは予算を常に流動的に考えとかんといけんだの」

と既に決まっていた他の予算を削ったり、使えそうな補助金を探し出したりして、周囲の人も説得してしまいます。

安直に考えると「ウチにも『周藤さん』が欲しい」という話になりそうです。

でも、周藤さんがやったのはゼロベースで考えるという王道の手法。

丁寧に周囲の理解を得る必要はあっても出来ないことではないと感じます。

個人のリスキリングと似てるかも

本書はサブタイトル「観光ブランディング入門」の通りの書籍ではあるのですが、個人のリスキリングに似てるのかもしれません。

最近、リスキリングという言葉が注目され始めていますよね。

何かまったく新しいことを学ばなければと気負う人もいるのではと推察します。

ですが、なんにも無さそうな寂れた田舎の温泉街が、いくつも新たな一面を見つけられたのです。

自分の思っていなかった自分があっても良さそうだというのが読後感です。

なお、玉造温泉おしゃべり看板願い石は公式サイトでも見れます。

絵手紙のような公式パンフレットが欲しい方、公式サイトで依頼すればくれるようですよ。

楽しいサイトなので、のぞいてみてください。

玉造温泉公式サイト・たまなび http://tamayado.com/