読了 - 「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書
2022年12月21日、経産省とIPAが「デジタルスキル標準」をとりまとめ、公開した。
IT技術者としては20年以上前に同じく経産省が主導して公開しながらIT業界以外では認知度の低いままとなったITスキル標準の再来のように思えてならない。
有用なスキルとそのレベル感を標準化しようとすること自体には意味がある。
しかしITスキル標準では、誰がそのスキルレベルにあると認めるか、その肝心な部分が仕組み化されなかったため、IT企業ごとに独自評価が行われることになった。
つまりA社のレベル5とB社のレベル5が同レベルにあるとは誰にも言えない。
結局、各IT企業内の人事評価や目標管理に使われる程度の指標となった。
デジタルスキル標準では同じ轍を踏まないようにしてほしい。
本書は「リサーチ&データ活用の教科書」と銘打っているものの初心者にとってわかりやすい印象は受けなかった。
しかしながら幾つか共感できるポイントもあった。
DXを目指す組織であれば、データを収集、分析し、データ活用につなげる活動は一部の人の仕事ではなく、全社的な活動にすることが望ましい。
データ収集~データ活用の裾野を広げる時、本書がいう 「もったいない」リサーチ&データ活用 のパターンはアリがちな失敗となりそうに思う。
目的が定まっていない、あるいは、共有されていない
新しい発見を求めていない
データやツール、分析方法などの使い方、読み方が分からない
収集したデータに忖度がある
特に「新しい発見を求めていない」。
リサーチ&データ活用の手法を学習する目的で、既知の知見をなぞるのであれば良い。
そうでないなら、みんなが知っていることをデータで裏付けても大した意味はない。
しかし、上層部から「とにかくデータ活用しろ」と言われたら、やってしまいそう。
データ活用のアンチパターンとして、共有すると良さそう。
「ビジネス視点でのリサーチ&データ活用」の考察
リサーチ&データ活用には、その上位でビジネス視点での目的、目標値、戦略、KPIが必要。
本書ではそのような話題だったのだけど、せっかくなのでビジネスの視点でリサーチ&データ活用を行う「目的」について考えてみた。
リサーチ&データ活用によって解決すべきビジネス上の課題として考えられるのは
市場に提供するバリューの向上
内部プロセスの改善
あるいは
- 新たに市場に提供できるバリューの発見
といったところだろうか。
例えば「内部プロセスの改善」におけるリサーチは 「ロス」を探すことになる。
時間、原材料、エネルギーのロス。
あるいは活用されていない情報やデータ。
プロセスを丹念に調べて、採取できるけれども、集めていないし、貯めてもいないデータを探し出し、そのデータとプロセスやプロセスのアウトプットとの関係を調べ、見落としていたことの発見につなげる。
『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』にあったトップ5%のリーダーの特徴「58%は発言頻度は多いが発言時間は短い」なんかがコレにあたる。
簡単に採取できるのに調べてみたことのないデータ、探してみないとダメですよね