バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 地域が稼ぐ観光

人口減少、東京一極集中。

うまくやった「どこか」だけ活性化すれば、残りの多くは廃れていかざるを得ない。

本書は地域を持続可能にすることを目指すための方策として観光を挙げているように思う。

一部の企業が都会を離れたり、リモートワークが十分に普及したとしても、それだけで過疎化が進む地域が無くなるとは思えない。

外部からその地域に流入する人がいなければ、遠からずその地域から人がいなくなってしまう。

流入させるには、そこを拠点とする産業が欠かせないし、そこに足を運ぶきっかけも必要。

そういう意味では観光から考えてみるのが妥当に思える。

ただ、かつてのように団体さんを呼び込む観光が再び栄えるとは考えにくい。

いまどき、宴会やゴルフのために会社ぐるみで旅行する?

多様な価値観を大事にする必要に迫られた企業が、昭和な組織風土を取り戻そうとはしないでしょう。

修学旅行だってグループごとに旅程を変えたりする時代だし、そもそも子供がバンバン増える未来が考えられない以上、修学旅行だって縮小していくはず。

そうなると「地域が稼ぐ」とは、本書が言うように大儲けするのではなく、持続可能を目指すことになる。

観光もコト消費

「映え」に群がるケースはあるけれど、同じ写真を何度もSNSにアップする人は少ないから、リピートに繋がらない。

だからだろうか

自分の価値観で自分のライフスタイルを表現できる観光へと変わってきている

本書はそんな体験型の観光のつくり方を考える書籍として面白い。

特に5章は目立った観光資源の無さそうな地域で「地域が稼ぐ観光」を作り上げる考え方が追いかけられる。

5章では「ライドクエスト」と言って、地域の特有のテーマに基づき、自転車を移動手段として地域資源を巡るプログラムを作る過程が解説されている。

ターゲットとなる生活者を集めたワークショップを成功させるための工夫や、需要調査の結果と実数に差が生じる理由など、初心者には気づきにくい点が書かれていて参考になります。

本を読めば簡単にできるというわけではないけれど、地域を持続可能にする手立ての一つとして考えるには良書だと思います。