便利なノウハウ: 問題 vs. 私たち
ちょっと経験が積もったSEが集まった時のお題。
「後輩・若手に一つ教えてあげるとしたら何を教える?」
言うなれば「SE力の伝承」です。
この時、私が挙げたのはアジャイル開発では定番の「問題 vs. 私たち」。
その時のやり取りを少し紹介させてください。
顧客の無理難題に押しきられない会議術
お客さんの中に声の大きな人がいて、無理な要望を押し付けられそうなとき、その問題を間に挟んでお客さんと対峙するのではなく、お客さんと一緒に問題に向き合うようにするんです。
これが「問題 vs. 私たち」というプラクティスです。
これに対して聞いていた人から出た感想は「まるで神業」。
え、いや、ちゃんとやり方があるんですよ。
お客さんがゴリ押ししてきそうなとき、こんな風にやってください。
席から立ちあがってホワイトボードに歩み寄り、お客さんの要望とその課題を書き出します。
書き出した要望、課題に誤認がないか、会議の参加者に確認します。
参加者の口から、付け加えることが出てきたら、最初に書いた要望と同じようなトーンで書き加えます。
追記が一段落したら、あなたもホワイトボードの方を向いて、書き出した要望と課題を読み上げます。
ほら、あなたもお客さんも同じ方向(問題が書いてあるホワイトボード)を向くことになっていますよね。
ココには2つのポイントが入ってます。
- ホワイトボードの方を向くことで物理的に「問題 vs. 私たち」の構造にできます。これで、お客さんが押し切るべき相手は、あなたから問題に変わります。
- 書き出してしまうことで「誰の意見だったか」という色が薄れます。声の大きな人の顔色ではなく、ホワイトボードを見ることで、ニュートラルな気持ちで意見に向き合えます。(これが「意見は対等」というプラクティス)
最初はうまくできないかもしれませんが、練習すれば誰でも出来る簡単な手法なんですよ。
「突然、立って話し始めるなんて、若手には難しくない?」
いえ、大丈夫です。
ホワイトボードに書き出す前に一言、まくら言葉を添えてください。
「ちょっと、すみません。私の理解のために整理させてください」って。
お客さんの要望を理解して向き合おうとする発言なので、ダメだというお客さんはあまりいません。
ホワイトボードに書きながら「こういう理解であっていますか?」と聞けば、なお良いでしょう。
ただお客さんに説明させるだけにするのはいけません。
説明を聞いたら、自分なりの理解を自分の言葉で説明して、理解が間違っていないかを確認します。
こうすると他の参加者の耳に残るのは「声の大きいお客さん」が推し進める要望ではなく、あなたが説明した「一つの意見」になります。
慣れてきたら
ちょっと上級編ですが、みんなの前に立ってホワイトボードに意見やまとめを書く役を引き受けると、会議の場をリードすることができます。
うまくファシリテートして、合意を作りましょう。
ホワイトボードの無い部屋だとどうするの?
ホワイトボードが無い部屋ではA3用紙、なければA4用紙でもいいですが、大きめの文字で書いて使います。
弱粘性の両面テープがあると、付箋みたいに後で綺麗に剥がせるので便利です。
壁に要望、課題を書いた紙を貼りだすのも、ホワイトボードと違う効果があって会議を盛り上げられます。
その話はまた次の機会にしますね。