読了 - 佐藤可士和の『世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略』
最近また、デザイン思考、デザインシンキングという言葉を見る機会が増えた気がします。
正直なところ、デザイン思考について書かれたネット記事、ブログ、書籍を見ても、どうもしっくりこなくて「なるほど、それはいい!」、そんな感覚に出会えずにいました。
改めて、6年前のメモをみると、「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」を読んだ感想として、 「理解→観察→視覚化→評価と改良→実現って当たり前すぎないか?」 「何が目新しいのか分からない」 等と不満たっぷりの思いが綴られていました。
そんな時、有名なデザイナーである佐藤可士和さんにとってのデザインとはなんだろう? そもそも佐藤可士和さんのような人の考え方がデザイン思考なんじゃないのか?
そんな思いから本書を手に取りました。
「未踏領域」をデザインする
本書の2章は2012年以来、佐藤可士和さんが慶応の湘南藤沢キャンパスでやっている「未踏領域のデザイン戦略」という授業のダイジェストのようになっています。
授業の組み立てもさることながら、学生たちのプレゼン実例、感想、Q&Aなど実際の講座を垣間見るようで楽しくなってきますし、学生たちが見つけた視点には目を惹かれるところもあります。
特に気にいったのは「防災のデザイン」をテーマに非常食をリデザインした『備食』。
非常食をギフトにまで昇華させたもので、ご当地コラボで特色を出して高速道路のサービスエリアで売ったり、お中元やお歳暮で贈る、というところまで考えられています。
今度出かけた時、サービスエリアや道の駅で探してみたいものです。
佐藤可士和の言うデザインの進め方
「未踏領域のデザイン戦略」で学生に教えているデザインの進め方は、
①課題 → ②コンセプト → ③ソリューション
①の「課題」とは、問題を解決するための取組やテーマのこと
②の「コンセプト」は、考え方の方向性のこと
③の「ソリューション」は、具体的に課題を解決するアイデアと実行プランのこと
特に「アウトプットを先に決めない」ところが大事なポイントだと分かりました。
「ロゴマークを作って」と依頼されたとしても、商品やサービスなどデザインする対象の本質に気付いてもらう方法としてロゴマークの変更が必ずしもいいわけではない。
最終的なゴールに辿りつくのに、何が適切なのかというところから考える、というのが本来のデザイン思考なのかもしれません。
ただ、そうだとするとSIerにとってデザイン思考を取り入れるのって難しいかもしれませんね。
「~システムのモバイル化」とか「生産管理システムの~」みたいなのが顧客からの提案依頼であることが多いです。まさに「アウトプットを先に決めて」くるんですよ。
何のためにそうするのか?と、依頼の源流に遡って考えないと本質的なゴールに近づけないと思っても、そこまで踏み込めるのは受注してから、というケースも少なくないんですよ…
ん~、デザイン思考の使い方は今後の課題ということにしよう。
ということで、いろんな気付きが得られた本書はお勧めです。
世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略 (集英社新書)
- 作者: 佐藤可士和
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2019/04/17
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る