読了 - 市場を変えろ 既存産業で奇跡を起こす経営戦略
「レガシー企業だからできるイノベーションがある」
序章にあるこの言葉が本書一番のメッセージであるように感じます。
本書は著者が実際にレガシー企業にイノベーションをもたらした際の経験をコアにしたノウハウを書籍化したものですが、レガシー企業に限らず、旧態依然とした組織の変革に応用できる知識が紹介されていました。
イノベーションをもたらすアプローチ
中小企業のLMI(レガシー・マーケット・イノベーション)戦略は…既存の事業で資金を作り、そのお金でイノベーションを起こすという「二段構え」で取り組むことだ。
ステップ1は効率化、ステップ2がイノベーション。
効率化で資金を生み出し、イノベーションに取り組む。
王道といえば王道ですね。
また、3章で紹介されている生産性を向上させる7つのフェーズも王道だと思います。
ちょっと表現的に分かりにくいというかイメージしにくいところもありますが、具体的なアドバイスになっているので、参考にしやすいと感じました。
7つのフェーズのタイトルだけ列挙しておきますので、詳細は本書をどうぞ。
- オーガニックフィットフェーズ(まずは現場に寄り添う)
- 共感フェーズ(共に戦う仲間を見つける)
- 構造化フェーズ(現状をモデル化する)
- デジタル化フェーズ(非効率な業務をデジタル化で変える)
- クリックウィンフェーズ(小さく成功する)
- データドリブンフェーズ(デジタル化で集めたデータに基づく評価、改善を進める)
- 経営理念の浸透化フェーズ(目指すべき方向性を浸透させる)
特に重要だと思ったのは「1.オーガニックフィットフェーズ」。
現行に寄り添いつつ、良い方向に変えていく人材として周囲に認めてもらうことです。
本書になかった点を一つ補足すると「非効率に見えても安易な否定は慎む」です。
誰もが忌み嫌っている現状なら既に改善されている可能性が高いです。
そうなっていないとすれば、「改善できないと諦めている」か、「誰かにとって必要なこと」です。
その非効率な業務が、誰かの存在理由だと認識されている場合、改善はその人を排除する意味を持ちます。
少なくとも排除される人にとっては切実な問題なので強硬に抵抗します。
あるいは上の方の偉い人が決めたことに基づいていて、改善することがその偉い人に盾突く意味を持ってしまう場合です。
いずれの場合も改善が誰かの心理的安全性を損なわないようにするケアが必要です。
今が悪い状態だとしても。問題の本質が潜在化することの方が困ります。改善できなくなりますから。
書き留めておきたいキーワード
幾つか、これだけはと思ったキーワードを書き留めておきます。
それは「発想の発端はシンプルでいい」。
4章、イノベーションの節で出てきたキーワードですが、この節では「お金をもらう相手を変える」「前払いの導入」「中抜き」など発想のタネが幾つか挙げてあります。
アイデアも「せんみつ(元の意味は「千、言ったことのうち本当のなのは3つ」)」と言われるくらいで、ヒットさせるのは容易ではありません。
結局、発想のタネを自分なりに集めて、日々、発想してみるしかないとも思います。
ちうことで、タネ集めに読んでみては如何でしょうか。
- 作者:永井 俊輔
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2019/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)