読了 - アンチ整理術
いきなり結論 !?
まえがきに結論が書いてある本は初めて見た。
「整理などしない」「断捨離はもってのほか」と言い切る本書は、まさにタイトル通り整理術に対するアンチテーゼ。
いたずらに整理する人を揶揄しているわけではなく、整理・整頓の必要性、作業に与える影響などの視点を掲げた上で合理的な話として著者の整理・整頓に対する考えを書いています。
写真は本書の裏表紙と帯ですが、中身は「知的生産のヒント」という感じもしません。
本書に倣って結論を先に述べると、著者と同じようにするのは容易ではないです。
著者の考えは
なにをしたいのかが大事なのであって、それさえあれば相応しい状態は作り得る。
創造的な仕事がメインである場合、片付いている必要はない
ただ、その前提として
- 作家という創作活動が仕事であるため、モノを明確にゴミだと判断しづらい(イメージを喚起する可能性があれば十分有用)。
- 基本的に仕事場を他者と共有しない。
- 収容場所が足りなくなれば増やせばよいと考えられる。
創造的な仕事をしていて、モノが散らかっていても平気だったり、都合の良い人はそれなりにいるでしょうが、場所が足りなくなったら増やせばいいと考えられる人は、そう多くないでしょう。
楽しく思考を巡らせられる
整理する方法の具体的な答えを知りたい人に本書はお勧めではありません。
ただ、本書全体としては読みやすいし、面白い問いを幾つも投げかけてくれているので、楽しめましたよ。
特に面白いと感じた問いは、以下。
- 整理・整頓は有効なのか?(ものを捨てるのにも労力がいるが、代わりに可能性を失う)
- これからの人間に要求される能力は新しい問題を見つけること。整理・整頓の行き届いた環境は不向き?
- 整理して面白いか?(気持ちがいいだけかもしれない)
それから、6章に本書執筆を著者に依頼した編集者との問答が掲載されているのですが、これも面白い。
著者の整理術を引き出して書籍化の話にもっていこうと奮闘する編集者に対して、バッサリ切り捨てる著者の返しが楽しいです。
ちょっとだけ引用しますので、あとは本書で楽しんでください。
編:森先生が考える、仕事で結果を出す人の知力みたいなものを、お聞きしたいのですが…
著:さあ、そういうことは考えませんね。
…
編:メモをとったもの、あるいはデータなどは、どのように管理されていますか?
著:管理していません。
きれいに片付いている状態の共有性
きれいに片付いている状態というと、モノが散らかっていない何もないスペースと、さまざまなモノが分類され、それぞれ所定の場所に収まっている状態を指すのが一般的だと思います。
でも、自分以外の人が片付けた後に「あれは何処にいった?」と探し回ること、ありますよね。
モノでも情報でも複数の切り口で分類することが出来るのですが、物理的に分類する場合は、分類軸を階層的に組み立てた分類体系に従うしかありません。
整理した本人にとっては分かりやすい分類体系でも、ほかの人にとっては別の分類体系が分かりやすいことはよくあります。
実は企業における共有ファイルサーバがその典型。
年度ごと、顧客ごと、製品ごと、どれをどういう順番で分類すると良いかは、ケースバイケース。
ある人が人事異動でいなくなり、後の人がファイルサーバに残ったフォルダを見ると何処に何があるかわからない、捨てたらまずいかどうかもわからない、結局そのまま塩漬け。
容量の大きいクラウドストレージを使ったら、さらにカオス化が深まる。
この状態の解消方法は、あ、本書の中身から外れすぎですね。
では、その話はまたの機会に。