読了 - 「面白い」のつくりかた
ドキュメンタリーが与えてくれるもの?
最近の若手テレビ制作者から「ドキュメンタリー番組を作りたいと思って、テレビ業界に入りました」という話をよく聞く
本書の中で一番、気になったのがココでした。
本書はタイトルこそ「面白い」とは何で、どう作るのかという、幅広い読者層をターゲットとした印象ですが、内容的にはテレビ制作者に向けた書籍。
読者を絞り込んでいる感じなので、エンターテインメント業界の考え方を知るには面白いものという印象です。
改めて冒頭の話に戻ります。
本書では「ドキュメンタリーに対する誤解がある。ドキュメンタリーにも作為は入っている。面白くするには演出が必要」とし、面白くするための演出、構成の大切さを伝えています。
一方で気になったのは「ドキュメンタリーを作りたくてテレビ業界に入った人が増えた」というのであれば、その事実には違う見方がある、ということ。つまり、
ドキュメンタリーは、若手テレビ制作者にとって「これだ!」と思うものだった
本書の内容から離れますが、面白そうなテーマなので、少し掘り下げてみましょう。
ドキュメンタリーとは、
文学におけるノンフィクションに相当し、「取材対象に演出を加えることなくありのままに記録された素材映像を編集してまとめた映像作品」と定義される。(Wikipediaより)
とありますが、この切り口だと面白くないですね。
私も一人の視聴者として、ドキュメンタリーとは何かを定義してみます。
ドキュメンタリーとは、知らなかった現実との出会いであり、その映像から気づきや洞察を得るもの、です。
最近はSNSやオンラインゲーム、VRなど現実感の薄いモノが身の周りに増えています。
このせいで「ナマっぽい現実」を見せるドキュメンタリーが心を打った、という辺りでしょうか。
ドキュメンタリーを作りたくてテレビ業界に入った方々に答え合わせしてみたいです。
名著「アイデアのつくり方」
本書の内容から外れて気になったことをもう一つ。
著者も本書の中でジェームス・W・ヤング氏が30年以上前に著した「アイデアのつくり方」を絶賛していますし、私もずいぶん昔に読んで「これこそアイデアのつくり方の真理だ!」と感動したものです。
薄い本で、書いてあることも極めてシンプルです。
最近、新装版も出たみたいですが、アイデアに関する書籍には同書が透けて見えるものをよく見かけます。
こうしてみると「アイデアのつくり方」は、繰り返し書籍になるほどニーズのあるノウハウだと分かります。
でも、繰り返し書籍化されるということは「誰でも知ってることではない」ということでもあります。
ニーズがあって、シンプルな方法なのに、30年経っても一般化しない、それが「アイデアのつくり方」。
アイデアを求める人は多くても、アイデアを生み出したい人はそんなにいない、ということなのでしょう。
ん?ひょっとすると、面白いを生み出したいテレビ制作者も実はそんなにいない?
本書が執筆されたこと自体が「面白いを生み出したいテレビ制作者が少ない」ことの証左かも。
- 作者:佐々木 健一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2019/09/13
- メディア: 新書