バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 世界一訪れたい日本のつくり方

ネットの記事やブログで外国の方が日本について書いてくださっているもので、日本語に翻訳されたものを時々読みます。

「日本は本当に落し物が見つかる国だ」とか「~人はなぜ日本が好きなのか」とか、読んでて嬉しく思う反面、たまに見られる良心的な行動が美化され過ぎてる感があるので、読むのは気持ちがヘコんでる時だけにしておこうと思ってます。

先日読んだデービッド・アトキンソン氏の記事(日本の消費税の議論はなぜ「こんなに的外れ」か)は、手放しの日本礼賛じゃないこともあって、面白く読ませて頂きました。

もっとも、アトキンソンさん自身は日本嫌いや日本批評家というわけではなく、かなりの親日家のようです。

だからこそ、日本にはもっとできることがある、と叱咤激励したくなるのかもしれません。

本書は、そんな叱咤激励が満載でした。

本書のスタイル

はじめに、の1ページ目から気付くことですが、本書は強調したいキーワードや文章にマーキングしてあり、その内容も含めてまるで参考書みたいです。

また、「世界の観光客数の推移」や国別の「訪日目的・回数別の消費金額」「訪日外国人観光客の年齢分布」などの図表が52も掲載されており、本書での指摘や提言がスルーしづらいものになっています。

本書では、世界の観光事情からみた日本の現状を指摘すると共に、結構具体的な提言を紹介してくれています。それらは出来そうなことだし、出来ないと外国人観光客が楽しめる日本にならないのだろうと感じさせられました。

本書が執筆されたのが2年前なので、既に取り組んでおられる事業者や自治体などもあるのでしょうが、読んでると「情報発信をこういう感じに変えられるんじゃないかなあ」などと自分も参加してみたくなります。

なるほど、確かに

■ 観光アピールというとCGやVRなど最新技術を使って派手なことをやりたがる

そうそう、好きですよね。

Webサイトや観光案内などは、外国人向けのものであっても「日本人の視点で作られたものを翻訳」しているものが多く、情報の受け取り手である国の人の視点までは考慮してないとの指摘です。

先日TVで外国のインフルエンサーに日本を紹介してもらう話を見ましたが、いかにも歴史がありそうな神社では淡々としていたのに、海の中にある小さな鳥居(厳島じゃないですよ)を見た途端、ハイテンションになって写真をバシバシ撮りだしてたのを思い出しました。

こんなの日本にしかない! は日本人には気付けない」

それは考えてみたら当たり前ですね。

■ 四季がある国など、世界中にたくさんある

日本人が日本の自然について語ると「日本には四季の恵みがある」という話がありがちですが、本書は日本における自然の魅力は多様性に富んでることだ言います。

日本の美しい自然を作り出したのは、日本が世界有数の自然災害大国だからだ、という話は驚きと共に納得の話でした。

普通であれば生物的に強い種が弱い種を駆逐して、強い種だけの一様な景観を生み出すことになってしまいます。

しかし日本では、地震、火山、台風など頻繁に訪れる自然災害が旺盛に繁殖する強い種を駆逐し、別の種への入れ替わりや、弱い種の絶滅防止に役立ち、結果的に多様性に富む自然を作り出している、と言われると納得ですよね。

そういえば、災害と恵みをもたらす自然の営みが日本人の自然崇拝や、協調することを重んじる社会などの「日本人らしさ」も生んだと、神道の本に書いてました。

■ カジノは自然観光や文化観光を整備するための集金エンジンの役割を果たす

カジノを含む統合型リゾート(IR)には反対の人が多いと認識しています。

しかし日本人が大事にしたい自然と文化の、十分な保護費用の出どころに困ってるのも実情です。

外国のIRではカジノが自然や文化財の整備費用を稼ぎ出している、と言われるとあながち反対ばかりも出来ないなと思ってしまいます。

外国人観光客、増えてほしいですか?

世界の観光事情からみて、日本は観光収入をもっと増やせるし、それが日本人にとって大事な自然や文化を保護する財源になる。大きな視点での考え方と具体的な提言が示された良書だと思います。

でも、日本人って閉鎖的な部分も少なくないと思っています。(日本人同士でも地方へ移住とかいうと、受け入れてもらうのに苦労する話ってよく聞きますよね。)

仏教やラーメン、カレーなど外国のモノを拒まず取り入れてきた歴史はあるけども、クローズドな心理的性質を乗り越えて、グローバルな交流のできる国民になっていけるのは、いつ頃のことなんでしょうか。

世界一訪れたい日本のつくりかた

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