読了 - 最高の顧客が集まるブランド戦略
ブランド戦略というと、ファッションのHERMESやコンサルティングのマッキンゼーのようなプレミアムブランドのためのものと思われることもよくあるようです。
でも、ブランドって「お客様に思い出してもらうためのタグ」みたいなものなので、それ自体を難しく考えることはありません。
例えば黄色くて丸みのあるMのロゴをみたらマクドナルドを思い出すようなもので、名前や外見、ロゴ、サービスなど統一感を持たせることで、どういう商品やサービスであるかを共通認識として思い出してもらう活動がブランディングです。
できるだけ簡単そうに言ってみましたが、差別化にはかなり影響力のあるものでもあります。
本書を書店で見つけた時、外車のブランディングも目先が変わって面白いかな?と思って読んでみることにしました。
本書の内容を簡単にいうなら、ボルボ・カー・ジャパンの社長である木村隆之氏が、ボルボを日本におけるプレミアムブランドに押し上げた戦略を解説するものでした。
(画像はVolvo Carsより)
プレミアムブランドを形成する戦略は参考になるか?
ただ、高級外車を商材とするブランディングが果たして身近に応用のきくものなのか?という点については読み始める前から不安もありました。
ま、結論的には、結構楽しんだし、参考にもなりましたので、面白かったところを記録しておこうと思います。
本書で見つけた「目からウロコ」な話と「やっぱりそうか」な話
「2人目の子供が生まれたからミニバンに買い替えよう」というのはライフステージによる選択で、これはトヨタと日産の領域。
そんな風にトヨタ、日産を見たことは無かったので、その指摘に驚きました。
確かに言われてみれば、若い頃に一人で乗るクルマ、二人くらいで乗るクルマ、子供を含めた家族のクルマ、子供を一緒に載せなくなった後の大人カッコいい感じのクルマと、トヨタのラインナップはライフステージに合わせて選べるようになってますね。
ちなみにボルボは「ライフスタイルに変化をもたらすクルマ」なんだそうです。
ユニクロは土日商戦のビジネスなので、月曜日に一週間の結果検証があるそうです。
チラシは計画通りの結果を得られたか?対前年ではどうか?対前々年ではどうか?気温まで加味して勝因、敗因を毎週分析するのだとか。
確かにフィードバックループの周期が長いと変化の激しいビジネスでは大変です。
とはいえ、短いサイクルの結果検証+次の戦略立案を回し続けるのも大変な努力。
きちんと続けておられることがスゴイですよね。
データによる経営
ボルボでは、カーオーナーの購買行動や競合ブランドの分析、自社やディーラー網の強みと弱みなど多岐にわたるデータ収集と分析をしてるとか。
本書にでてくる具体例として特に関心したのが以下3つ。
- 指名買い比率
- 継続的な顧客との関係構築を評価する指標
- 日本でのボルボの総保有台数
- サービス業は顧客数が重要指標という考えで、ボルボにおける顧客数の代替として
- 車齢
- 車購入後からの年数。車齢が若い方が買い替えに繋がりやすいから、だったかな。
いずれも、こんなものが指標になると思ってなかった数字です。
成果を測る直接的な指標が採取できなくても、その指標に影響を与える因子を割り出して指標化すれば良いという実例と言えますね。
プレミアムでなくてもマネできそうなポイント
まったく接点のないお客さまにはアプローチの仕掛けが必要
そういえば以前、「北欧のコーヒー文化」を紹介するイベントがボルボのディーラーでやってたので行きました。あれはその仕掛けだったんですね。
もちろん店内にボルボ車は展示してあるんですけど、イベント自体はクルマと全然関係なく、北欧でのコーヒーの話ばかりでした。
お客さまとの接点づくりは、商材に絡めるだけが能じゃないということなんですね。
広報活動の強化。…広報が働きかけて新聞や雑誌に記事を書いてもらっている。
ボルボでは宣伝効果の期待できるものに絞ってプレスリリースを打ってるそうです。
メディアに取り上げてもらうのが簡単とは言いませんが、同じ程度の露出でもCMや広告に比べてはるかに安価です。
生産性=付加価値÷労働投入量
分母を絞ってみても付加価値が低いままでは大した効果にならない。
付加価値を増やすには、リピートを増やすか、サービスでお金を稼ぐかの二通り。…お金を払ってもらえないサービスは止めないといけない。
私はよく「お金をくれるか、感謝してくれるかしないとやってられない」と言うことがあります。
やっぱりサービスもコストがかかってますから、お金を払うに相応しいと思ってもらえないようなサービスなら、提供する価値があるか見直すべきと思ってます。
ストックのお客様も大事。
ストックのお客様とは、まだボルボを買っていないけど来店したことがあり、住所や氏名、メールアドレスなどが分かっているお客様
ハインリッヒの法則みたいなもので、買ってくれるお客様を増やすには、ストックのお客様から購入前段階である「興味を持ってくれているお客様」を増やす必要があります。
自分のビジネスにおける「ストックのお客様」を思い浮かべて、「興味を持ってくれているお客様」「比較検討してくれるお客様」…「買ってくれるお客様」へと進んでもらうには、どういうアプローチが必要か考えないといけないですね。
いや、予想以上に刺激を受けた一冊でした。
最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」から プレミアムカーへ進化したのか
- 作者: 木村隆之,小沢コージ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2019/07/02
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