バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 売上を減らそう。

そもそも就業時間内に利益を出せない商品や企画ってダメじゃないですか?

逆説的でツリっぽいタイトルでありながら、帯に興味をそそられて、本書を読み始めると「はじめに」に至るまでの端書きにあった一文にドキッとさせられました。

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毎日の仕事は定時で終わるのが理想だし、そうあるべきだとは知っていても、当たり前のように残業してしまっているのが日常です。

でも、終業時間内に利益を出せないのはダメなんじゃないのか?と問われてみると、「そりゃそうだ」と思います。

残業している理由はと言うと、トラブルが起きたから、顧客からの変更要望が飛び込んできたから、予想したより難しかったからなど、いろいろありますが、要するに全く順調に進んだ場合だけ就業時間内に終わるように計画されているけれども、何事も起きないということがない。

「スケジュールは順風満帆が前提。何かあれば残業で対応します。」みたいな計画で、必ず何かは起きるから残業が日常化しているように思います。

本書を一言でまとめるなら『毎日を楽しむ働き方のススメ』です。

ブラックの代表格と言えそうな飲食業界で残業ゼロができるなら、ほかの業界でも残業ゼロでやっていく方法がありそうだと気づかせてくれる内容でした。

ブルー・オーシャン戦略の実例

佰食屋の営業はランチのみ、国産牛ステーキ丼専門、100食を売り切ったら営業終了。

簡単なまとめ方をすると、ステーキ丼のレシピがすべての土台ではあるのですが、経費を可能な限り絞る代わりに、良い食材と丁寧な接客で差別化を強化する、という仕組化がポイント。

仕組化が出来ていることは、イチオシ商品が異なる店「すきやき専科」「肉寿司専科」への展開が成功していることが証明になっています。

本書1章で語られる創業ストーリーを読む限り、ブルー・オーシャン戦略を採用しようとしていた訳ではないようですが、結果的にはブルー・オーシャンの好例となっています。

経営戦略の本って分かりやすく書いてあっても、事例となるとあまり詳しく書いてないことが多いように思います。

本書はブルー・オーシャンをやるのに参考になる「具体的にはどうするの?」が満載でした。

「神は細部に宿る」の言葉通り、細部の具体的なことを知らないと戦略など使いこなすことは出来ません。

本書で解説する佰食屋のビジネスモデルは、その根幹となる考え方と共に実践してきた具体的な工夫も紹介してくれていますので、応用しやすいと感じました。

他業種でも使える佰食屋の知恵

これは!と思ってメモった個所を少し紹介します。

■100食限定というビジネスモデルが産み出したメリット

メリット1. 早く帰れる

… 忙しいとしても、100食までという終わりが見えているから、最後のお客様まで、心から、ありがとうございましたと挨拶できる。

メリット2. フードロスほぼゼロ化で経費削減

この辺りはまだ「まあ確かに」と気づく点でもありましたが、メリット4で紹介されている以下の点はスゴイです。

ロボットでもできる仕事を人間がするからこそ生まれる改善

…同じことを繰り返すからこそ、些細な変化や違和感に気づくことができる。その違和感から生まれるのは、お客様がもっと過ごしやすくなる、あるいは、自分たちが働きやすくなるための小さな、でも価値あるアイデア

ロボットに置き換えられそうな仕事を人間がやるから改善できる、これは目からウロコな話でした。

■広報戦略

商品やサービスの特徴を「わかりやすいキーワード」にすること。…キーワードの掛け算でユニークさが際立つ。

最近では、SNSやメディアに取り上げられるということは非常に効果的ですが、取り上げてもらうためのポイントをシンプルに伝えてくれたのが「分かりやすいキーワード」の「掛け算」ですね。

■従業員の人間関係

役割に名前を付ける

包容力のある人を「マザーテレサ」と呼んだり、肉の計量が素早くて正確な従業員を「測りのHさん」と呼ぶことで、従業員の中でその人の良さが認知されるし、名づけられた人も自分の長所を自覚するとか。

こういう細かい工夫が本書にはちょこちょこと紹介されているのですが、「それならウチでも出来る」を見つけてほしいのが著者の想いなんですね。

佰食屋( https://www.100shokuya.com/ )、行って食べてみたいなと思ったんですが、整理券の配布は朝9:30からですか。

う~~~ん、行ける日は来るかなぁ…

売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放(ライツ社)

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