読了 - 「つい やってしまう」体験のつくりかた
ダイエット中のおやつ、スマホでゲームやツィッター、ちょっとしたイタズラなど、「つい、やってしまう」ことは身近に溢れています。
その人を「惹きつけてしまう」仕組みがわかれば面白そうだと本書を読んでみました。
これが、なかなか秀逸な本でして、読みながらピックアップしたメモが3000文字になってしまっていました。
そんな本書の感想を一言で言うなら、「この本はRPGだ !!」 です。
本書は、その構成自体がこれまでの書籍に類を見ません。
アタマの方の見開きページの左側に、本書が解説する体験デザインの全体像が示されますが、箱や矢印が描かれた枠組みがあるだけで文字がほとんどありません。
同じ見開きの右側には体験デザインがもつ力として
- 「つい」やりたくさせてしまう
- 「つい」熱中させてしまう
- 「つい」誰かに言いたくさせてしまう
とあり、全体像の中の3つの箱それぞれに「1」「2」「3」と書いてあるので、読み進めると一つずつ箱にポイントとなる言葉が埋まっていくのかな?と予想してしまいます。
そう、最初に使命と謎の図が与えられ、未知の世界に飛び込んでいく、これってRPGですよね。
(イメージで描くなら、こんな感じ)
「へぇー」「あ、やっぱり」「え、そうだったんだ」
本書はまず、スーパーマリオがプレイヤーをゲームの世界に引き込んでいく仕組みの解説から始まります。
スーパーマリオの冒頭の画面、マリオの帽子とヒゲ、コントローラーの十字ボタン、これら全部で、たった一つの、大事なことをプレイヤーに伝える役割があったと言われたら、答えが分かる人はいるんでしょうか?
本書は少しずつヒントを加えながら、時に、次の展開を予想させたり、予想を裏切ったりしながら、スーパーマリオやドラクエがどれほど綿密に仕組まれていたかを解説していきます。
それは、体験を仕組むことで、心の動きや、行動に影響を与えることができることの解説でもあります。
出来れば本書は手に取って読んで欲しいので、あまり内容についてココで書かないようにしますが、なるほど!と感じた一文を、私の備忘も兼ねて幾つか挙げさせてもらいます。
- 心の文脈こそが、体験の意味を決めている。
- 自分で学び、自分でできるようになったことは、自信が持てるし、疑わない。
- 仮説を立てられる状況証拠と、確認する手段を提供すると、確認したくなる。
- 私たちの脳は常に「~するのかな?」という次の行動について仮説をつくりたがっている。
- ほぼ全員が無意識に解いてしまう問題もあれば、ほぼ誰も解こうとすらしない問題もある。
- 予想が外れるという体験が、疲れと飽きを払しょくする効果を持つ
- 伏線…ある情報の真意が分からない状態でいったん提示した上で、時間差で真意に気付かせる手段。
- 自分で気付かせると、つい「アレはね、実は…」と誰かに語りたくなってしまう。
体験をデザインすることの意味
本書は元・任天堂の企画開発者である玉城真一郎さんが、スーパーマリオやドラクエを題材にして、人を動かす仕組みを「体験デザイン」として解説した書籍です。
ゲームの名作がどのように作られているかを知ることはゲームデザイナーには重要ですが、ゲームデザイナー以外の人にとって、体験デザインにどういう意味があるのかが、読み手としては大事です。
ITエンジニアである私が体験をうまくデザインできるなら、プレゼンの時、聴衆に「気づきを得る」機会を与えたり、自身の成長を感じさせることが出来たり、会議なら、参加者に納得感を与える会議を演出できるようになりそうな感じがしました。
実際、本書の巻末には以下の応用例がそれぞれ数ページを割いて紹介されています。
- 企画
- ファシリテーション
- プレゼンテーション
- プロダクトデザイン
- マネジメント(、育成)
自分の仕事に関係しそうなあたりから、読んでもいいですね。
再読すべきか?
本書には「さいごのさいご」として
この本を再読していただく必要は率直に言ってありません。
と書いてあります。
でも、敢えて再読をお勧めします。
なぜなら、再読してみないと気づかないことが本書に仕込まれているから。
ぜひ、見つけてください。
「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
- 作者: 玉樹真一郎
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/08/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る