バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 知の越境法

求められる知の越境

業界の垣根はどこまで崩れていくのやら。 グーグルやアマゾンは、既に従来の枠組みだと何屋なのか分かりません。

従来の枠組みが揺らいでる以上、越境していくことは企業にとっても個人にとっても避けがたいことなのかもしれません。などと思ってたところに本書に出会いました。

池上彰さんというと、政治、経済、外交、歴史など様々なことを毎週のようにTVでわかり易く解説しています。幅広くなんでも知っていて、なんでも解りやすく説明できる池上さんが「知の越境」をどう解説するのかと期待一杯で読みました。

池上さんの教える越境法

本書を読んでみるとすぐに気付くことですが、いわゆるノウハウ本のように学ぶポイントを大分類、中分類とブレイクダウンしていく構成ではありません。

このため、池上さんが教える越境法を要約しようとすると戸惑います。

それでも、共感した幾つかの箇所をピックアップしてみます。

まずは本を読む

どの分野にも「種本」と言える本があり、そこを押さえるのが異分野に越境するときの正攻法。種本は多くの関連書籍の参考文献になっているので、いくつか関連する文献をあされば見えて来る、とのこと。

ソフトウェア業界なら、よく耳にするキーワードに種本が出所になってるものがありますね。

「人月」・・・「人月の神話」ブルックスが著したソフトウェア工学とプロジェクト管理の書籍

銀の弾丸はない」・・・『銀の弾などない— ソフトウェアエンジニアリングの本質と偶有的事項』同じくブルックスが書いた論文

デスマーチ」・・・ヨードンが著したプロジェクト管理の書籍

確かに、これらの文献を読むとソフトウェア業界が抱える課題が他業界の人にも解ってもらえるでしょう。

アウトプットを意識したインプット

やはり、NHKの「週刊こどもニュース」を担当したことが大きく影響しており、池上さんは「根本から知のあり方を洗い直された」とまで書いています。

分かっているはず、あるいは、分かっているつもりのことでも子供に説明するとなると難しいという話は分かりやすい話です。ただ「子供に説明するにはシンプルでないといけない」「核心まで届いてないとシンプルに説明できない」とあったのには、改めて「なるほど!」と納得させられました。

そして、「基本や原点に帰ると応用が幅広くできる」「核なるものある方が越境は面白くなる」と、核心まで踏みこんで学ぶことが、更なる効果に繋がることを教えてくれます。

自分の足りないものを点検し、補う。

アメリカでは学会や会議があると夜にパーティーが催され、そこで仕事の話をするのは無粋だとされている。日本人はそういうパーティーでも仕事の話をして敬遠されるという話には、痛いところを突かれた思いがします。(身体を動かすのは苦手だし、スポーツ観戦もしない。TVもあんまり見ないし…う~ん、なんか考えよう。)

現地に行って体感する

セルビアの難民キャンプにいるのは女性と子供、男は市街地の公園でたむろする。

こういう実態を知らなければ、何故そうなってるのか、その先にあるものは何かということ自体に気付きません。現地を見ること、実際にやってみることは越境を促す力になりますね。(本書には、セルビアにたどり着いた難民男性がセルビア難民認定を受けようとしない理由と、その先に目指す国がなぜ目指されているのかも書いてます。)

まとめ

セルビア難民の話以外にもアメリカのシェール革命がスエズ運河の通行料金を下げた仕組みなども書いてあって、「へえー、そうなんだ」と楽しく読むことのできる本です。

ただ読んでて思うのは、この本のタイトルは何故「知の越境法」なんだろう?ということ。

しばらく考えてみて分かったように思います。

要するに「知の越境」は、その方法自体は難しい訳じゃない。難しいのは始めることと、続けること。

だから池上さんは、越境して出会うものが役立つことや、出会うこと自体の面白さを本書に盛り込んでいるのでしょう。越境を恐れることなく続けていければ、人としての広がりや深み、遊びまでもが身に着けられて豊かになれるよ、と後押ししてくれているのかもしれませんね。

知の越境法 「質問力」を磨く (光文社新書)

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