読了 - 予想どおりに不合理
自分だけが知ってると便利
行動経済学って、そんな悪魔のささやきが聞こえる知識ですね。
「現金は盗まないけどコーラなら平気で失敬する」「頼まれごとなら頑張るけど安い報酬を示された途端にやる気が失せる」、人間が採る判断や行動には傾向があります。
これを研究するのが行動経済学とのこと。
本書は行動経済学を多くの人に知らしめたとして有名な本であるそうなので読んでみたのですが、なかなか面白いというか、こういうことを知ってると結構便利な場面がありそうです。
おとりの選択肢
読み始めていきなり感心させられたのがこの「おとりの選択肢」。
強引にまとめると、人は特徴の異なる選択肢としてAとBの2つがある場合、Aを選ぶ人、Bを選ぶ人に概ね半分に分かれるケースがあったとします。
そこにAに似ているけど、明らかにAより劣る選択肢A'を加えた場合、圧倒的な比率でAが選ばれるのだそうです。
A'がAより選択されないのは当然です。
しかし、何故かBを選択する人も減ってAに票が集まるのだそうです。
つまり公平な比較を提示しているようでも、実は、選んでほしいものだけに票を集めることは出来るということなんですよね。しかも選んだ人に気付かれることも無しに。
恣意の一貫性
最初の価格が恣意的で出鱈目な質問に対する答えにも影響される。
一旦その価格が自分の中で定まるとある商品にいくら出すかだけでなく関連する品物にどれだけ出すかまで方向付けられる
これは「アンかリング」のことだな、と読んでて気づきました。
例えば価格交渉する時に、最初に「100万円」と発言しておけば、相手もこの「100万円」の付近で話を進めてしまう。
あたかも最初の「100万円」が船のアンカーのように働き、アンカーの周りから離れられなくなるというヤツですが著者は「恣意の一貫性」と名付けたそうです。
「なーんだ、アンカリングのことか」と、この先が分かった気になりながら読み進めていくと、アンカリングって結構すごいことが分かってビックリします。
なんと金額などの数字だけでなく行動や判断にもアンカリングはあって、自分自身が前にとった行動を基にして、ものごとの善し悪しを判断してしまうんですって。
こうなると大事なのは、相手にとっての「最初」をどう印象付けるかが、こちらの望むアンカーに縛れるかどうかに影響するということですね。
理屈は本書で知りましたが、この判断のアンカリングって、ときどき使ってます…
私の実体験についての具体的な説明はご容赦いただきますが、結構、効果的です。
本書の解説「なぜ私たちは行動経済学を学ぶべきなのか」
本書末の解説は、以前にNHKのEテレで又吉直樹と「オイコノミア」という経済番組をやっていた大竹文雄先生が書いてるんですね。
オイコノミアでも、大竹先生による経済学の解説は分かりやすくて、イメージしやすい話が多かったと記憶しています。
大竹先生曰く、本書は行動経済学の最初の一冊として最適で、2冊目はダニエル・カールマン著『ファスト&スロー』(早川書房)が良いそうです。
でも私としては、2冊目に進む前に、ちょっと時間を空けてから本書を読み返そうと思います。
短期間で読むより、もうちょっと味わって読む方が楽しそうな本でしたから。
予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダンアリエリー,Dan Ariely,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/08/23
- メディア: 文庫
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