読了 - 農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦
近年、農業分野にもテクノロジーの波が押し寄せているようで、TVドラマ「下町ロケット」で自走式無人トラクターが取り上げられたのが昨年でしたが、すでに農業用ドローンは一般に販売されているだけではなく、シェアリングに向けた規制緩和も検討が進んでいます。
更にはAIを組み合わせたドローンが撮影画像を基に病害虫を検知して、必要な箇所だけに農薬散布することも出来るようになっています。
ピンポイント農薬散布テクノロジーの特許が九州地方発明表彰の「文部科学大臣賞」を受賞
<株式会社オプティム 2019.11.08のプレスリリースより>
いつの間にか、農業もハイテク産業へと進化していますね。
そんな農業新時代を切り拓いてきたパイオニアたちの取り組みを紹介したのが本書です。
新しいアプローチ?
読んでいると、それぞれの挑戦の中に印象的な言葉や、惹かれる視点が見つかります。
- 常識を上回るために、毎日が実験
- 畑に入らず、カイゼンとマネジメントに特化した関わり
- みんなと同じことをやってちゃだめだ。自分でいること。
- 毎年、新しい品種や作物をテスト栽培して、懇意のシェフの反応が良ければ本格栽培(リーンのMVPそのもの!)
- 野菜を売る店舗や消費者の都合やメリットまで考えた
- 既存の流通システムが生産者のモチベーションを下げてきた
- 未利用資源オタク。廃棄されてるモノを価値にする。
- ほとんどの人が同じ土俵で競い合ってる。トマトの糖度が高い低いというけど腰を抜かすほど美味いトマトを食べたことはない。
特に最後に挙げたトマトの話はその通りだと思います。
同様の話ですが、日本にブランド牛って何種類あると思いますか?
Wikipediaによると47都道府県すべてにブランド牛があって、全部あわせて153種。
やはり日本人は微妙な差にこだわりを感じてしまうからでしょうか。
岡山のバナナ農家さんの話もすごいです。
この方、30年以上も時間をかけて、南国フルーツであるバナナを岡山で栽培する方法を編み出してしまいました。
その独自の栽培法「凍結解凍覚醒法」は、無農薬、無化学肥料、糖度二倍、成長速度も二倍、皮まで食べられるから栄養価も飛び抜けて高いバナナを生みだすことになったようです。
農業と言えば、地方のお年寄りが過疎、高齢化、跡継ぎ不在に苦しんでるだけなのかと思っていました。確かにその困難は今もあるに違いないけれども、実は驚くべきポテンシャルを秘めていて、いまこの時代に開花しつつある、そんな力強い未来を期待してしまう一冊でした。
- 作者: 川内イオ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/10/18
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