バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

利益を生むサービス思考

世界一のメートル・ドテルが教える 利益を生むサービス思考 (光文社新書)

「サービスで顧客をつかむ時代だ」とは、本書のまえがきに登場する一言であり、その通りだとも思う。

IT技術者といえども「次もお願いします」と顧客に言ってもらうためにはお金を払ってもらう以上の満足感を得てもらう必要がある。

だから、これまでにもリッツ・カールトンについて書いた「サービスを超える瞬間」や、一流のコンシェルジュと言われる阿部佳さんの「ホスピタリティのプロを目指すあなたへお客様の“気持ち"を読みとく仕事コンシェルジュ」なんかも、技術書の合間に読んできた。

本書の著者 宮崎辰さんについては2013年 NHKプロフェッショナル 仕事の流儀で知った。

当時、宮崎さんは高級フレンチレストラン「ジョエル・ロブション」における接客の総責任者で、2012年のサービス世界コンクール世界大会で「世界一のメートル・ドテル」に選ばれた人だった。

そんな宮崎さんは、どんなことをサービスについて語るのか、と本書を読んでみた。

「おもてなし」と「サービス」は違う

こう言われれば、ほとんどの人は「そりゃ、そうでしょ」と同意するように思う。

でも、改めて思い出してみると、接客に対して「おもてなし」という言葉を使っていたような気がする。

「おもてなし」と「サービス」はどう違うのだろうか?

宮崎さんは、「おもてなし」とは「心のこもった接遇」のことであり、主体者の純粋な「思い」が始点となるものだという。対する「サービス」とは、受容者にあわせてカスタマイズするものであり、対価に応じて発揮される技術である、という。

1個数百円で仕入れたパイナップルでも、お客様の目の前で切り分けるデクパージュというサービスをすることで数切れで数千円のデザートに変えられる、というのです。

もちろん、ただパイナップルを掴んで切り分けるわけではなく、パイナップルに直接触れずに後からフォークで刺して、ナイフで斜めに皮をむいて輪切りにして、銅製のフライパンで火を通しながらブランデーをかけてフランベする。そうしてお客様の視覚、嗅覚、聴覚を刺激をして、パイナップルが目の前に届くまでの時間をエンターテインメントにしてしまうのだそうです。

本書は宮崎さんの経験に基づくサービスが、章ごとにまとめて書いているような印象を受るが、章のタイトルとその本文をみると違和感のある箇所もある。その点については正直なところ残念だ。しかし、本書全体としては宮崎さんの経験や考えに基づくプラクティスに溢れている。

章立てから少し離れて読み解けば、一流のサービスの裏側にあるものを知ることが出来て楽しむことが出来そうです。