バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - 「無理」の構造 この世の理不尽さを可視化する

理不尽は、公平ではないものを公平だと誤認したことで発生する

理不尽の生じる仕組みを論理的に解析した書籍に初めて出会いました。

自分から見て理不尽であっても、視点を相手からに置き換えてみると、その行動や判断の理由らしきものが見えてくることはあります。

本書は、その理由らしきものを解析することで理不尽が生じる仕組みを解き明かす書籍です。

理不尽の元凶は「対称性の錯覚」

理不尽は「本来同等でないものを同等だと思い込んでいること」から来ているというのが本書の仮説。

物理的、知的、心理的、これらにある非対称性をひも解き、私たちの思い込みの素が解き明かされています。

「見えている人」と「見えていない人」

  • 抽象レベルを理解している人には具体は見えるが、具体しか見えていない人には抽象レベルは見えない

  • 抽象の世界というのは、いざ自分が見えるようになってしまうと、見えなかったときの自分の気持ちにもどるのが難しくなり、逆に抽象化なしではいられなくなってしまう。

本書の中では知識、思考、具体と抽象、人間心理における非対称性や、不可逆性(逆向きの変化ができない性質)、幻想が私たちの世界の随所に存在し、そのことに気づかないことが理不尽さを感じさせることに繋がっていることを解き明かしています。

大きくまとめると「見えている人」と「見えていない人」の間にある違いが理不尽さの元凶のようですね。

「見える」ようになることで、理不尽だと感じる機会は大幅に減らせる。

それは、相手と自分の間にある見解の相違に気づくことで、理不尽だと認識しなくなるわけです。

思い通りにいくようになるわけではなくて、思い通りにいかせるためのハードルの存在が見えるということ。

解決するわけではないです。

でも、問題の存在が分かれば対処を考えることはできます。

不満は残ったままでも、モヤモヤは無くなります。

例えば、

「視野の狭い人」に向かって「もっと視野を広げて」とか「全体を見て」というのは何の効力もありません。視野の狭い人は「自分の視野の狭さに気づきようがない」のが最大の問題だからです。

このことが分かれば、「なぜ、あの人の視野は広がらないんだ!」とモヤモヤすることはありません。

自分に出来るのは、諦めて受け入れるか、視野が広がった先にある世界を「視野が狭い人」に見せることで、外の世界に対する興味を喚起させることくらいだと分かります。

理不尽が発生する構造を知り、モヤモヤを消すのに本書はいいですね。楽しく読めました。