読了 - オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
これほど明快に「AIとの付き合い方」を説明されたのは初めてだけど、「なるほど!」と腑に落ちました。
「AIに仕事を奪われる」という話が、今でも時々耳にしますし、AIとの距離感を図りかねる人は大勢いそうです。
本書での「AIと人間の関係は、ドラえもんとのび太のようなもの」という解説は分かり易いです。
本書曰く
AIによって単純作業は減っていくでしょう。
でも、多くの仕事は単純作業だけで成立しているわけでもありません。
便利な道具を出してくれるドラえもんがいても、それを使ってどうするかを決めるのは私たち人間の役割で、それは変わらないんですね。
日本より、うまくデジタルと付き合う台湾
マスクの在庫状況をスマホで確認できるアプリが活用されたことをはじめ、機敏な対応で新型コロナを封じ込めた台湾のデジタルとの付き合い方も本書で解説されています。
その考え方として何度も出てくる表現が「誰も置き去りにしない」です。
- 一連のマスク対策で重要だったのは ”問題を処理する順番” でした。我々はまず対面式あるいは紙ベースでしか対応できない人について処理を行い、その方式を進める中で「もっと便利で早い方法を使いたい」という声に対応していきました
- ネット環境が良くない地方にまず5Gを導入するのです。それによって、地方の人たちの学習環境や健康管理の権利を確保したり、改善したりすることが可能になるでしょう。
台湾は、不利な立場にいる人、マイノリティーの立場にいる人を、置き去りにせず、先にフォローしようとする土壌が作られているようです。
これは、ぜひ見習いたい姿勢です。
「すべてのものにはヒビがある。そして、そこから光が差し込む」(レナード・コーエン「Anthem」より)
本書を読み進めて終わりに差し掛かった時、「本書から何を感じ取ればいいんだろう?」と自問していました。
ページをめくって本書の「おわりに」にたどり着いたとき、その答えがありました。
あんまり引用してばかりは著作権的に良くないのですが、要約したり省いてしまうと伝わらない気がするので、ここも引用させて頂きます。
タンさんは、このように本書を締めくくっていました。
もし、あなたが何かの不正義や注目が集まっていないことに対し、怒りや焦りを感じているのなら、それを建設的なエネルギーに変えてみてください。そして自問自答してください。
「こんな不正義が二度と起こらないために、私は社会に対して何ができるだろうか」と。
この問いを、怒りに対して抱き続けることで、怒りは建設的なエネルギーとなります。そうすれば、誰かを攻撃したり何かを非難したりせずに、前向きな新しい未来を作る道に止まることができます。
そして、あなたが見つけたヒビに他の人たちが参加し、そこから光が差し込みます。
ぜひ、ご自身でも本書を読了されることをお勧めします。