バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - コロナ後の世界

本書は6人の著者(文春新書編集部いわく「世界を代表する知性六人」)が、それぞれ「コロナ後の世界」をテーマに執筆した論文集です。

ただ、中には「コロナ後」のことには違いないものの、「コロナがなくても同じ」というものもあって、コロナによる変化がもたらすものを知ろうとする方には、物足りないかもしれません。

(というか、私は少し物足りなかったです)

もちろん「コロナによる変化の話ではない」というだけですから、外出がままならない時期に読んでみるのはアリだと思いますよ。

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イギリスでは約30%の人が今後も在宅を続けたいと思っている(第3章)

実際にイギリスでの調査結果で在宅勤務を望む人が約30%いたそうです。

身近でも、しばらくの在宅勤務を経て出社した人が「もう通勤、イヤ」と嘆いてました。

本来、IT業界は在宅勤務に向いています。

OSであるLinuxを始めとする様々なソフトウェアがオープンソースで開発されています。

ご存じない方のために補足しますと、オープンソースのソフトウェア開発というのは、インターネット上にあるリポジトリ(ざっくりハードディスクみたいなモノと思ってください)に、世界中からプログラマがアクセスして、プログラム開発を進めていきます。

そこには「物理的に集まる」という前提がありません。

それでも世界中の人が使う様々なソフトウェアが作り出せているのですから、在宅が出来ないはずがありません。

否定的な方は「顔を合わせないとコミュニケーションロスが出る」と言うのですが、オンラインゲームを通して友達以上に親しくなる人もいますよね。

本書でも提言されているように高性能の通信環境があれば、かなりの部分がカバーできます。

オンラインがリアルな対面で得られるものすべてを賄うとは思いませんが、概ねOKなら後は、在宅勤務で得られるものとのトレードオフに過ぎないのでバランスを取ることは可能でしょう。

日本の生活様式や住宅環境が在宅勤務のハードルになることは理解しますが、在宅あるいはサテライトオフィスが当たり前の選択肢にできるなら、地方の過疎化などいろんな問題に解決策ができそうです。

いろんな選択肢の取れる社会になるといいなあ、というのが本書の読後感でした。