バナナでも釘は打てる

柔らかく美味しいバナナでも、ちょっとした工夫で釘は打てます

読了 - シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

「美術館とSNSマーケティング、違和感のある組み合わせだな」

これが昨年、本書の存在を知った時の第一印象でした。

公共性の強い企業、団体がSNSで発信する情報には、堅くて面白みがないイメージがあったので、どういう切り口でSNSマーケティングを語るのかが読みたくなった動機です。

ついでに言うと、5/10までならKindleで50%オフだったのが後押ししました。

f:id:ino-agile:20200503015447j:plain

テクニックではなくSNS運用の本質

著者の洞田貫(どうだぬき)氏は森美術館の広報・プロモーション担当であることから、本書では著者自身が森美術館SNS運用を務める中で得た知見を伝えてくれるという形式となっていました。

著者が伝えることのコアメッセージと感じたのは

  • 17万のフォロワーに向かって発信するのではなく、「1対1」の関係が17万ある。
  • 家族や友達に話しかけるときと同じ気持ちで投稿を考える。

この2つです。

顔の見えない大衆に向かってブロードキャストするのではなく、また、「来館して欲しい」とか「(グッズを)買って欲しい」と訴える気持ちを控えて、身近な人に「いま、こんなのやってるよ」と伝える気持ちで投稿するのが良いとのこと。

こんな風にまとめると具体性のない話ばかりに聞こえてしまうかもしてませんが、本書では著者が実際に行った工夫も、どういう発想でどんな施策を打ったのかなど具体的に紹介されています。

金沢21世紀美術館にある《スイミング・プール》の写真を森美術館のチケット売り場で見せれば入場料が割引になる「プール割り」もバズ狙いに見えますが、実は展示中の芸術家を意識させるためだったと聞けば、拡散したくなる施策の作り方の実例として参考になります。

SNSの投稿は「川に短冊を流すようなもの」

同じ内容を何度も投稿しづらいと思うのは当たり前だと思いますが、著者は「短冊を読んでくれるのは、その時たまたま川べりにいた人だけ」とし、伝えたい相手にとって大事なことは繰り返し発信する、それがユーザー側に立つ姿勢だと解説します。

そんな見落としがちな視点や丁寧さを思い出させてくれる書籍というのが読後感です。

Kindle版なら出かけずに買えますし、気軽に読めますのでお試しと思っていかがでしょうか。

シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略

シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略