読了 - 「納品」をなくせばうまくいく
https://www.amazon.co.jp/dp/4297103583/) に続いて読んでみました。
今まで読まなかった理由は単純で、この本が出版された頃、テーマとなっている「納品のない受託開発」自体はネットのいろんな記事で取り上げられていたし、私自身がほとんど一括請負の仕事を担当していなかったので、なんとなく読みそびれてたというところでした。
さて、改めて本書を手に取って読み終わった印象を3つ挙げると
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平易な文章で読み易い
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具体的なことに踏み込んでいるので消化不良にならない
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自身で産み出したビジネスモデルの中身を公開できることがスゴイ
でした。
「納品のない受託開発」とは
倉貫氏が産み出した「納品のない受託開発」は、アジャイル宣言の背後にある原則(http://agilemanifesto.org/iso/ja/principles.html)の1項目『顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供します』を実現したものと言えるでしょう。
その特徴を一言でいうなら「サブスクリプション化したソフトウェア開発」でしょうか。
Amazon Web ServicesやOffice 365などサブスクリプションのサービスはソフトウェア利用形態の一つとして認知されつつあります。それでもサブスクリプションをソフトウェア開発に適用した事例は倉貫氏の経営するソニックガーデンを除けば、まだ聞いたことがありません。
確かにソフトウェア開発の一括請負は現在も主流ですが、「所有から利用へ」というのが市場動向である以上、それがいつまでも続く未来は無さそうですし、これから先のソフトウェア開発を考える時、「納品のない受託開発」は現実解の一つなのでしょう。
「納品のない受託開発」を成立させるのに必要なもの
本書を読み進める上で一番気になるのは「納品のない受託開発」は本当にビジネスとして成立するのか、です。
これについては倉貫氏の経営するソニックガーデンの存続自体が答えでもある訳ですが、一番気になるポイントを3つあげるとすれば、
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受け入れてくれる顧客はいるのか?
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どのように進めるのか?
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社員はついて来れるのか?
この疑問に対して本書は丁寧に回答していますので、幾つか抜粋してみます。
市場ニーズはあるのか?
要するに一括納品の形態がビジネス上の不利になる顧客です。そして、その代表例がスタートアップ企業なんですね。
市場が大きく変動する昨今、半年以上も先のサービスインを目指してソフトウェアの仕様を確定させることは、スタートアップ企業でなくても容易ではありません。確実といえる部分から作り始め、内外の変化に臨機応変にやっていきたいと思う企業はきっとある、いや、結構多いかもしれません。
何から始める?
最初のリリースが対象とするのは「操作がひと回り」するところまで、とのこと。これは、MVP(Minimum viable product)から初めて、素早くフィードバックを活かす、リーンスタートアップの進め方そのものですね。
最初から運用までを一人でカバー
一人で出来るの?と心配になるところですが、顧客との打合せは2人体制にして担当者の不在に備え、不得手なことは同僚たちのエンジニアリングチームでカバーするのだそうです。確かにそれなら何とかなりそうです。
人材が胆
うまく協働できる人材を集められるかどうかが「納品のない受託開発」を継続可能な事業とする肝だと思いますが、ソニックガーデンでは採用には徹底的にこだわって、採用する側、される側、双方が一緒にやっていけると納得しないと採用しないとのこと。納得です。
まとめ
ここまで書いたらマネされるのでは?と他人事ながら心配にもなったのですが、むしろ同調する人が現れることが本書の狙いでもあるようです。その方が、顧客とエンジニアの両方に優しいソフトウェア業界が広がることになるからなんでしょうね。
本書では「納品のない受託開発」を事業として成立させるための仕組みづくりについても記載していますが、これについては最新刊「管理ゼロで成果はあがる~」の方が参考にし易いです。
自分なら、どんな風にするかなあ…などと考えてみてますが、さて…